
小さな手、小さな声、大きな未来 ― ドングリの森から
- 佐藤 琢朗
- 4月27日
- 読了時間: 2分
「おみず、たっぷりあげるんだよ」
ちいさな手が、一生懸命にジョウロを傾けた。
4月24日、あさぎり町の畑に、未来をつなぐ一滴一滴がこぼれ落ちる。
南陵高校農業環境コースの3年生17人。
彼らは、地元の摩耶幼稚園の園児たちと一緒に、ドングリから育てた苗木を植えるために集まった。
「ここに、どんな森ができるのかなぁ」
幼い声が、風に揺れる。
「リスさんのおうちになるんだよ!」
「じゃあ、ぼくカブトムシさがす!」
笑い声が土の上をころがる中、
高校生たちは、そんな園児たちの小さな希望を、静かに胸に刻んでいた。
——この苗木は、ただの木じゃない。
——未来の誰かを守る、いのちのバトンだ。
2020年の豪雨で見た、濁流にのまれたふるさとの風景。
あの日、何もできなかった悔しさが、今、生きた行動になっている。
「大丈夫。この小さな手が、未来を変えるんだ。」
心の中で、そっとつぶやく。
苗木の土に手をかける園児の横で、高校生たちはやさしく声をかけた。
「ぎゅってしてあげてね。木がよろこぶよ。」
園児たちは、にっこりと笑った。
空には、どこまでも澄んだ春の光。
「一歩一歩しか進めないかもしれない。
でも、この一歩が、誰かの明日を守るかもしれない。」
そんな確かな想いを胸に、
今日、また一つ、命の森への種がまかれた。



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